3ヶ月を経て、気づきと振り返り

はじめに

「仕事に年齢は関係ない、社会は無差別級だ」という1年目の頃にもらった言葉を今でも大事にしている。ちょうど4月で5年目を終えて6年目が始まるというタイミングに昔を思い出した。社会でなんとか生き残れている。死んではいなかった。

直近3ヶ月を振り返った中で、気づいたことを自分の中で整理し書き記しておく。側から見たら何のことだかわからない、理解できない内容になっているだろう。すまない。

これは普通のエンジニアが難しい事業状況の中で、チームリード業を担ってプロダクトをなんとかしようと足掻いた3ヶ月を振り返った内容だ。端的に伝えられる文脈はそれだけにしておく。

個人のメモにとどめておくこともできたが、あえて公開しようと清書した。 その意図は最後まで読んでもらえればわかるかもしれない。

気づきを振り返る

1. イシューからはじめる

自分の仕事のスタイルは一言で表すことができる。イシューからはじめることだ。

これはどんな役割や状況でも変わらない、普遍的な仕事のやり方。良い成果が残せるかどうかは良いイシューを定義して、そこに最適な手段で向き合い続けられるかどうかにかかっている。

違うとすれば、イシューの抽象度や解決に巻き込む関係者の数、理想と現実の間にある飛躍といった変数で、そこにどれくらいの癖があるかどうかで解決までの難しさが変わってくる。

イシューの見極めと解決手段の取捨選択、粘り強い取り組みと機転を効かせた修正さえ間違えなければ、成果が残せることをこの3ヶ月で証明できた。

自分はこのやり方を初めからできていたわけではなく、「イシューから始めなければダメだ」と気づいてから実践し始め、一人前に成果が残せるようになるまで丸4年かかっている。4年かけてやっとそれなりの成果が残せるようになるという速度だ。自身の生存戦略として、藁にも縋る思いで身につけた考え方だった。

凡人が努力するとそれくらいかかるが、才ある人は数ヶ月で身につけられるだろう。新しくスタートを切り始める季節だが、もし生き残ることに困っている人がいれば、この考え方で仕事をすることに賭けてほしい。きっと報われる時がくる。

2. チームの成果に集中する

最善の成果が残せるのは、個人かチームかという深い問いがある。

チームを凌駕する個がいることを認めながらも、「遠くに行きたければチームになろう」というどこかの言葉が全てを表していると思う。

自分はチーム論をサッカー方面から学ぶことが多い。南アフリカW杯の時に岡田監督が香川ではなく松井を選んだ理由が「最後にチームで戦えるやつを選んだ」とコメントしている。(ref)

チームの成果に集中するのはメンバーだけでなく、リードもだ。 むしろ、リードこそがチームの成果に誰よりも集中していかなければいけない。

監督という立場で、嫌われを承知で結果を追い求める意思決定をする岡田さんのマネジメント論が個人的には好きだ。フランスW杯ではカズをメンバーから外し、南アフリカW杯では香川を外し、内田を1度も起用しなかった。(ref) サッカーファンならそんなことする?と思うだろう。

それでも岡田さんは「ベスト4進出」という目標を果たすための意思決定をしてきた。

好かれて結果が出ないよりも、嫌われながらも結果を出し、次に繋がる何かを残す方が正しい。 それがマネジメントの価値なのだから。

ただし、嫌われたとしても相手には最大限の配慮と敬意を示すことができなければいけない。岡田さんは中村俊輔を外すことと引き換えに、中澤もキャプテンから降ろしている。そういった点で見ると、自分はまだ器が小さかった。

3. 偏りを許容する

偏りを作らなければ解決できないこともある。バランスが保たれていることが良い時もあるが、時には偏る必要もあるのではないか。その時、意図を正しく理解してもらう努力をすること、互いの持ち場で頑張ることが、最後に良い成果につながると思っている。

重いイシューを1人が取り組んで、他を全て任せるという布陣を取ることは個人プレーで、チームワークではないかもしれない。でも見方を変えて、チームワークがチームでゴールを達成するための手段であるとするならば、正当化できるのではないか。

メッシが守備をしなくても世界No1クラブの立役者になれて、最高の結果が伴った最高のチームだと呼ばれているケースもある。これと同じに考えられないだろうか。

チームであることと、チームワークのあるべき姿は切り分けて考える。 最善の布陣はゴールから逆算すれば、自ずと見えてくるはずだ。

4. 過程の透過性を担保する

性善説を前提として、意思決定や進捗の過程を限りなくオープンにすること。これが互いに信頼を生む。特に文脈や文化が大きく異なる人ととの関係であるなら尚更だ。

今の仕事は社内はもちろん、社外でも透過性を強く求められる。隠すつもりは全くないのだが、見え方を気にした動きができていなかった。そういったことまで気を使う力がなかった、気の使い方がわからなかったというのが正しい。

透過性を限りなく保てるようにしたことで信頼を得ることにつながった。もちろん保つだけではダメで、成果を出してこそだと思うが、その土台を設けることが実は大事なのだと気づけたのが大きかった。

もし次何かをやるなら、性善説で透過性を保つスタンスを持ちながらも、どう同期させていくかまでを考慮して進めるだろう。

5. 小さくとも積み上げる

10xとはなにか。非連続な絵を描きながらも、目の前の連続的な一歩を確実に積み重ねることだと自分は考える。 どちらかが欠けてもダメで、どちらも達成しなければいけない。故に難しい。

小さく積み上げることだけに目をおくと、非連続には見えないかもしれない。 それでもまずは小さく積み上げ、信頼を獲得することに努めることが大事だ。 小さな積み上げで誠意を示す、できることをまず見せる。

徐々に非連続なイシューに広げ、価値の出し方を変えていき、結果的に大きな成果を作っていく。一朝一夕では成らないが、小さな差が大きな価値を生む。その大局観こそが、リードが持つべき資質なのではないか。と思っている。あのザッケローニも細部にこだわっていた。(ref)

何をやるにも、とことんこだわって突き詰めようと、監督は言っていました。「神は細部に宿る」とよく言われますよね。サッカーに限らず、一人ひとりが自分の仕事にこだわって精度を上げていけば、いいチーム、強いチームができるのだと教えられました。

6. 言い訳しない。逃げない。受け止める

不都合な事実から逃げない。逃げても良いことはない。受け止めて前に進める。

何度か詰められるシーンがあった。それでも自分は1度も逃げたり言い訳したことはなかった。「解決の糸口が見えていないのに、ゴールスケジュールを定める意味があるのか?」「完了に至れる根拠がないのに、スケジュール通りと言って良いのか?」これらの問いは最もだし、正論だった。

そういったシーンでも、解決に向かう努力をし、そこを信じて賭けてもらえるように誠意をもって答えを返す。それが"事に向かう"だと思っている。

そうしてでも諦められたら、単に運がなかったと切り捨てることも大事だ。自分を捨ててまでやる必要はない。

7. 変われることを証明する

最も近しい同僚の振る舞いが素敵だった。それを言葉で表すならこうなるだろう。

常に変わり続けようという姿勢は自分も持っているが、証明するという意識までは持ったことはなかった。それを今回、強く意識させられて意識を強く持つぐらいがちょうど良いこともわかった。

注意しておきたいのが、全てを迎合するわけではないということ。意思や考えがあればそれを貫くことも大事だ、その時は自身の考えを主張する。でも折れたら素直に変わる。

まずは率直にフィードバックをもらえる事に感謝したい。

8. 時間が解決することもある

成果の属性が遅効である場合、一定の時間が必要になる。これを ”そういうものだ” と認識して構えられると気持ちが楽になる。

問い合わせ対応の数を減らすイシューを解決してきた。減らすための策を講じてから効果はすぐに出るものの、全体を通して減ったことを体感できるまでには時間がかかる。これを「事実と実態の乖離」と呼んでいる。

そういうものだと理解し、思考を整理して臨むことが取り組むイシューによっては必要だ。 そうすれば、中長期で価値があるものに腰を据えて取り組むことができる。

9. 期待通りの成果で着地させる

チームの成果を評価するとき、目標としていた基準から最も評価されるべきは100%で達成したときだ。120%の達成でも80%の達成でもない、100%だ。

達成率は投資に対して計画に沿った妥当な意思決定ができていたことを表すもので、成果はもちろんだが、その妥当性の証明こそが何よりも重要で、信頼を勝ち取ることに繋がる。

考え方は人それぞれなので、どんな解釈もできると思う。それでも成果という観点だけで見れば、自分は定めたゴールにきっちり合わせにいけるチームこそが最も優れていると考える。

チーム感は薄かったが、全員の働きは素晴らしかった。

10. 誰よりも未来を信じる

結果を出したければ、その結果が出る未来を誰よりも信じ切らなければいけないと思う。

それが信じきれないなら、すぐにやめた方が良い。時間の無駄で、良い結果は望めない。

感情論的で理屈で説明できないが、なんかそういうのも必要だなと思った。未知を許容する力とも言えるかもしれない。「なぜ、その達成に執着するのか?」と問われたら「信じているから」という、それ以外の言葉がない。

最後に

振り返って気づきを整理してきた。ここに挙げたのは一部で、細かな点も含めればかなり多くの学びを得られた期間だった。たった3ヶ月だが、自分には十分すぎた。

4月からはチームリードを降りることにした。再現性を持って成果を出し続ける力がないという結論に至ったからだ。

同僚からは「肩の荷が降りたみたいだね」と言われた。本当にその通りで、難しい状況から解放されて、穏やかな気持ちで過ごせている。またしばらくは1人のプレイヤーとしてチームに集中し、自分が残したいと思う成果に向かって励んでいきたい。

今はチームリードをやるモチベーションは0だが、またタイミングが来たらどこかでトライしようと思う。 その時は反省を活かしてもっと上手くやるだろう。

そしてどんな形であれ、自分の力で0から良いチームを作りたいと思う機会にもなった。それは何かを創業することかもしれないし、あるチームに加わって大きくすることかもしれない。または、仕事以外のシーンで、1人目2人目で加わることかも。

いずれにせよ、40くらいまでには、この時の悔しさや苦味を晴らしたいなと思う。

そう思える機会をもらえたことに感謝したい。

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