ローンチの頃を思い出して

ローンチの頃を思い出して

この記事は10X 6thアニバーサリーアドベントカレンダー 2023/06 2日目の記事です。

10Xは創業から丸6年を迎えるということで、なんとも感慨深い気持ちになりますね。

自分はちょうど働き始めてから2年半が経過し、これまで1つの組織に長く属して仕事を続けてこられなかった身としては、もう続いてるだけでも偉い!という気持ちでいます。

一般的に見ると年数はまだまだ浅い方かもしれませんが、人数規模から考えると古い方に属するメンバーになりました。昔どこかで「古株は歴史を語る責任がある」という言葉を聞いたことを思い出し、自分が入社当時どんなことを思っていたのかを思い出せる限りで書いてみようと思います。

昔の記憶はどんどん薄れていくもので、ここに書き記した内容を後になって読み直した時に当時の状況がどんな感じだったのかを鮮明に思い出せるきっかけになれればなと。

アプリレビューから感じる将来性

Stailerは2020/05にローンチされました。当時のリリース

ローンチする瞬間には立ち会えていませんでしたが、ローンチしてすぐ (2~3週間後?) から関わり始めており、当時はローンチ後のバタバタが少し落ち着きはじめていた頃 (6月半ば) で、粛々と改善のサイクルを回し始めていました。

社のSlackに入ってすぐの頃で印象に残っているのが、App Storeのレビューです。

当時はApp Storeに載ったレビュー内容をSlackに投稿するチャンネルがあり、気軽にその内容を確認することができました。

一般的なアプリのレビューコメントは「使いやすい」「便利!」「たまに動作がおかしい」といったひとことコメント系が多いのですが、Stailerが提供するアプリのレビューは違いました。

「子育て中の我が家は、片手間でスマホから注文できるのは非常に便利です!Webよりも見やすく注文しやすいです。「割引」の情報がアプリだと少ないと感じます」という感じで、長年Webサイトのサービスを使っていたお客様からの具体的な改善要望や、どういう時に使っていて助かるのか、誰におすすめしたいのかといった、熱量の高いレビュー(メッセージ)がとても多かったのです。

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評価自体の高低 (星1から星5) はあるにせよ、書かれた内容は細かい点が多く、またそれも的を得ていると感じられるものばかりだったのにも、凄みを感じました。

それまで熱量高くサービス利用していたお客様の声がアプリレビューという形で顕在化した瞬間で、"お客様から求められるプロダクトはこういうものなのか" と、その時プロダクトの将来性を強く認識できた瞬間でもあります。

これはトライアル (当時の選考で一緒に働くプロセスがあった) 中の出来事でしたが、入社の決め手の1つにもなりました。

エッジの効いた技術

今でも継続していることですが、10Xは当時から技術方面でもエッジが効いて (尖って) いました。

過去に何度か触れたことがあるように、主たる開発言語を比較的マイナーなDartに統一していることや、サイトコントローラー (WebサイトをPuppeteerで動かして問題解決する) でサービス提供を始めるところ(しかも相手は巨大な小売業)、少人数でありながらk8s(クラウドマネージドベース)を活用しているところなどは、外から見ていた限りでは尖りすぎている印象でした。

今でもある「ないものは自分たちで作る」「自分たちで発明して最適解をつくる」といったハッカー文化は当時からあり、卓越した技術突破力を持つメンバーがいたことも、エッジの効いた選択でありながら、優れたプロダクト開発が実現できていた所以かもしれません。

ないからできないと諦めるのではなく、できるように工夫するのは当時からあった考え方で、それが扱う技術で顕著に現れていました。

ミニマムなプロダクトとその価値

当たり前ですが、昔はプロダクトそのものがとても小さなものでした。体感は今の1/10規模くらい。

開発者であれば2時間ほどキャッチアップすれば全体を理解して、手を動かして開発を始められる大きさです。今では手厚いオンボーディングがありますが、当時はなく、自分でなんとかしてねというスタイルでした。

当時からプロダクトサイズに対して扱えたトラフィックやGMVの量は相当なもので、プロダクトサイズは "できること" の量と比例する傾向がありますが、提供している価値とは必ずしも比例しない、つまりは 真に価値を生む機能は実はとても少ない ということを数字が物語っていたのです。これを初めに目にした時にはとても驚きました。

定説として知ってはいたものの、実際に生々しく目にすることができたのはその時が始めてて、価値を生む"位置"にプロダクトを置くこと、そして "必要とされる機能を必要とされる質で揃えること" がいかに重要であるかを肌身で理解できたのもこの時です。

さすがに具体数字は載せられませんが、それくらいのインパクトが当時からありました。

そしてその驚きはプロダクトの将来性を示しており、その将来性がどれほど現実味を帯びていたかは今の状況が証明しているように思います。

テストは自己責任

リリース前に実施するテストは自己責任(!)で運営されていました。

自己責任とは、作った本人 or 関わったメンバーができる限りの努力でテストを実施し、リリースに向かうというものです。今ではQAチームがいてテスト設計やリリースプロセスの整備など、手厚いサポートを受けていますが、当時は自己責任でなんとかしていたのです。

先の通り、プロダクト規模が小さくリリース自体も小さく重ねていた時期でもあったので、バグの混入自体が少なかったのと、もし何かあってもすぐに対処して回復に至れるだけのアジリティがあったので、やり方としては身の丈に合っていたと思います。

水曜日にアプリの定期リリースがあり、さらに水曜日にオフィス出社が推奨されていた文化もあってか、水曜日の午前10時30分くらいから11時頃までをアプリのテストで時間を使っていました。

このスタイルにも限界がきて、1年後の2021年夏頃には "QAプロセスをきちんと整備しないと品質を守りきれない" という状態になりました。テストは身の丈に合わせるが正解かもしれません。

1週間で1リリース

先に触れた通り、毎週水曜日の昼あたりにアプリのリリース(ストア申請)が行われていました。

開発サイクルはこのリリース合わせて基本回っていて、"いかに水曜日に間に合わせて開発イシューを捌くのか" が生産性の最適化意識を向ける方向だったように思います。

水曜日は必ず出社してコミュニケーションを中心とした仕事をする文化が当時あったので、その日中にリリース作業と次のイシューの方針すり合わせや調整、相談ごとを解決する1日に費やす形になっていました。結果、水曜は他と比べて倍以上人と話す時間が多くなり、夕方ごろにはヘトヘトになって帰路に着くといった感じになっていたのが懐かしいです。

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なお現在は水曜日のオフィス出社推奨文化はなくなり、各チームごとに出社頻度の調整は委ねられています。

最小のコミュニケーション

Slackチャンネルは当時10もなく、最小規模で最大効率に仕事をするスタンス (尖りの1つ) がありました。

数が少ないので、入ったばかりの身でもすぐに話全体の流れや注目されている問題に気づくことができ、情報のキャッチアップに特段苦労はしませんでした。

ただやはり、全体としての発言数が少ないのは若干気が引けたところがあったのも事実で。億劫になっても仕方がないなと思い、そういうものだと割り切って、強気で(?)コミュニケーションを取っていこうと開き直りをした記憶があります。

成果の最大化と効率化に素直に向き合った結果の合理性なので、自分は嫌悪に感じるよりも一定共感できた部分が大きかったです。そしてそれが組織にうまく溶け込めた要因かもしれません。今振り返ると、このスタイルは人をかなり選ぶだろうなとは思っており、コミュニケーションを頻繁に取りながら仕事をこなしていきたい人にとっては苦痛に感じてしまうだろうなと。

働き方の多様性を受け入れて生産性の平準化を取ることよりも、画一性でありながら生産性を最大化を維持することを選択していたと捉えることができ、dead or aliveのプレッシャーが強い中では後者を選ぶのが正ではないかなと。その考えが顕著に出ていたのがSlackであり、コミュニケーションスタイルだったのかもしれません。

緊張感

今でもないわけではないですが、当時はかなり強い緊張感があったように思います。

それも当たり前で、プロダクトの成否が今以上に不透明で、半年先の状態も見えないほど不確実性が高かったからです。

例えば、「下手なイシュー定義をするな」「下手な変更は加えるな」「常に自分のやるべきことを自分で考え、自分で工夫してなんとかしろ」こういったことを直接誰かに言われていたわけではありませんが、日々の振る舞いや発言を通して節々に感じていたものです。

あくまで自分が感じていたことを言葉にしてそのメッセージ性どう汲み取っていたかの表現なので、本当にそうだったのかは分かりません。ただ、体感していた身として確実にそこにありました。

この緊張感はある人にとってはパフォーマンスを落とす要因にもなりますし、ある人にとってはパフォーマンスを引き上げる要因にもなるものだと思います。自分は幸いにも後者の働きを受けられた側で、成果の質にこだわるための良いプレッシャーとして上手く使う意識を持っていました。また、もともとそういったプレッシャーの受ける環境で育った身でもあったので、受け入れられたのかもしれません。

特別感

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今以上に特別な感じが当時はありました、今でも唯一無二の存在としての特別な感じはしますが、当時はその感覚がかなり強かったなと思います。

なぜそうだったのかを考えると、1.個性的であること 2.独創的であること 3.野心的であること この3つが会社組織, プロダクト, 事業どれもに強く現れていたからかもしれません。

個性的な面は組織面に特に表れていました。当時揃っていたメンバーはみな何か得意とする分野を持っていて、その得意なものを活かしながら成果を上げることが推奨されていましたし、それを最大化するような布陣が組まれていました。

独創的であることは、事業モデルやプロダクトの表現など、成果方面で強く感じられました。スタートアップと大企業を結ぶビジネスモデル、他社システムをオーバーラップしたアプリなど、簡単には真似できないなものが多く生まれています。

野心的なのは今も変わらず、スタートアップとして大きな成功を目指して逆算的に考え、常に目の前のことに向かって最善を尽くす姿勢はあらゆる面で見受けられました。

成長のモメンタムとも捉えることができる"特別である"という感覚は、決して売上といった数字成長だけでなく、その場に居合わせた人の空気でも作られるのではないかなと。それが空気だけで終わることもあれば、徐々に結果が伴って本物になっていくものもあり、10Xは今のところ本物に近づける道に進んでこれているのではないかと。そうこれまでの過程を振り返って思います。

まだまだ先は長くなりそうですが、これからも特別な感覚を失わずにやっていきたいですね。

最後に

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2020年頃を振り返って、当時思っていたことを書き連ねてきました。

今は今で目の前の物事に集中して取り組んでいますが、こう振り返ってみると今とは全く違う部分が多くあったなと思います。その分変化してきたということでもあり、今取り組んでいることもいずれ捨ててなくなるものなのかもしれません。

なくなってしまうことを嘆くのではなく、潔く捨てて、次に向かって前を向いていきたいですね。

ということで、次に向かっていく仲間を10Xでは募集しています。リクルーティングサイトはこちら

興味あればぜひ声をかけてください。

それではまた。Bye

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