2022年をやったことで振り返る
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まとめると
- 2021年末に期待した変化はおおよそ実現できた
- 自身に大きな飛躍はないが、確実に前進した年だった
- 2023年は未開の地に進むことを楽しんでいきたい
炎上の火を消した
2022年前半はチームリードの立場で、炎上の火消しをしていた。これまでも何度か燃えた現場を経験してきていたので、向き合うこと自体に驚きはなかったが、いざやるとまぁ、なかなかしんどかった。社内に閉じているだけならまだ楽だったのかもしれないが、社外にも説明責任を果たすとなると話が違った。
目の前には燃えた問題だけがあり、組織の信頼が毀損し立場が弱く主導権を握れない、切れるカードも限られている、メンバーのフラストレーションも溜まる、そんな状況だった。
この最悪な状況から目を背けず、状況が好転することを信じて目の前の課題を1つずつ愚直に解くことでしか火は消せないと判断し、腹を括って何とかしていた。ただサービスを止めたくないという一心でコトに向かっていた。
炎上というと人によってはひどくネガティブに捉えられるが、いわゆるスタートアップあるあるで「カオス」と呼ばれるもの。これは事業機会に適応するためにストレッチした反動のツケが後から回ってきたイメージ(成長痛) 、急激な成長を目指すスタートアップなら高確率で通る道なので、結果論的には良いものとして捉えているし、この出来事がなければ事業も組織も急激な成長なんてないだろうとさえ思う。
今ならもう思い出話的な感じで「あの時大変だったわ〜w」と言えるが、当時は本当に洒落にならないくらい大変で、、、息が詰まりそうな毎日ではあった。あまり記憶もなく、具体で何をやったかは覚えてない。
3ヶ月瀬戸際で踏ん張り続けたことで状況を好転させることができ、炎上も鎮火に向かえた。
ちょうど期が変わるタイミングでもあったのでリードもマネージャーもやめた。
短期だが十分に役割を果たしたと思うのと、自身が向き合いたい課題 (後のアーキテクチャ改善や品質など) が当時から何となく見えてきて、この炎上の教訓から同じ誤ちを繰り返さないためにも組織とプロダクトに先手を打つポジションにつきたい、付け焼き刃ではなく、根本の課題を解決しにいきたいという思いがあった。
当時から明確に今のポジションを見極めきれていたわけではないが、結局アーキテクチャ改善を推進する状況にまではたどり着いたので、良い判断だったと思う。
Individual Contributorとしてのポジションに戻った
先の炎上を一定静めてからはまたICとして立ち回っていた。
成果で見ると不完全燃焼感が強く、もっと成果を出したかったという気持ちが強い。
振り返ると経営上の優先度が高いイシューの解決が中心だった。具体的にはソフトウェア品質の根本改善と将来の事業機会適応に向けた投資。
- 大きめの機能リリースと開発ライフサイクルの検証
- 細かい不具合修正と障害対応
- アーキテクチャ改善の探索
- クリティカルな機能のリファクタリング推進
- Null Safety対応といったコードの改善
- 対外発信と採用活動支援
ICに戻った頃は先の炎上の影響もあってか、組織もカオスな状態から抜け出せない状況で、動きづらさがあった。体感で20~30人規模の頃に発揮していたスループットの1/3くらいまでパフォーマンスが落ちていたと感じており、強い危機感をもっていた。
危機感はあるものの、それを個人が声デカに叫んだところで何かを変えられるわけでもなく (そういう規模にまでなってきたし、組織を改善する領域は専門外) 、トップとそれを推進するチームを信じて、とにかく状況が好転することを耐え忍ぶ時期が続いた。(同時進行で組織の再編成が走っていたのでとにかくそれを待っていた)
抜本的に組織構造が見直されてからは疎結合な組織に変わって、徐々にスループットが戻ってきているのを感じられている。あのまま進んでいたら事業自体危うい状況になっていてもおかしくなかったので、組織が改善されたことが今年一番良かったことかもしれない。組織改善に向き合ってくれたチームには心から感謝したい。
QA/SETロールの人と働いた
今年は「ソフトウェア品質」に本格的に向き合い始めた年だった。
これまでQA/SETロールの人と近く働いた経験がなく、品質は ”うまく守られていくもの”という、漠然としたイメージにとどまっていたが、意識的に守っていくことを身を持って学んだ。
向き合う対象は同じソフトウェアと言えど、観点が違うとこうも見えているものが違うのか…!と驚きがたくさんあった。”品質を守ること、向上させることは難しい…” と何度思ったかわからない。
品質保証を点で見るのではなくプロセスで捉え、企画段階にあるアプローチの仕方を仕組みや関わるメンバーの考え方から変えていこうとする取り組みを、QA/SETチームのHeadが旗振り役となって、粘り強く取り組んでいた。彼らがいなければ今の状況はない。
理想はまだまだ遠く、課題が山積みであるが、確実に1つずつ品質改善が積み重ねていけている実感があるので、これを続けてソフトウェア品質を上げていきたい。
アーキテクチャ改善始めた
8月頃からポジションを変えてプロダクトのアーキテクチャ改善に取り組み始めた。
今年の後半は探索的なことに時間を使うことが多く、一般論を参考にしながら、手探りで自分たちなりのアーキテクチャの答えを見つけに行く活動が中心になった。
自分たちの ”アーキテクチャ改善” は「大きなトラクションを生んでいるプロダクト、およびアプリケーションコードの構造に誘導的な力を加えて漸進的な変化を生み出し、次の価値を生み出せる構造に進化させること」と定義できる。
これはプロダクトの成長上限を引き延ばすイメージで、既存の延長線でも一定レベルまで成功できるかも知れないが、そこで満足せず成長角度を上げることを目指している。
また、早い段階から先手を打って、”先行して事業機会に適応していけるようにする” という意図もこのタイミングで取り組み始める理由としてはある。これは先の炎上での教訓から得たもの。
探索が中心であったため、まだこれといった成果を残すことができていないが、水面下では温めているものがいくつか走っているので2023年の前半には少しずつ見える成果として出していきたい。
合わせて自分自身も改めて「ソフトウェアアーキテクチャとは何なのか?」「どのようにアーキテクチャを変化させるのか?」「何を得るために、何を諦めるのか?」といった問いに深く向き合うようになった。真に理解できていないことも多く、2~3年の時間をかけて自分なりのアーキテクチャ論を確立していこうと思う。
20から100を経験した
組織規模が20から100に変化することを経験した。
正確にはこの1年で50から100なのだが、自分が加わったタイミングが20で、そこからの変化を振り返られる100名というキリの良い数字に12月で到達できた。
当たり前だが20と100は全く別の組織で、仕事のやり方、情報共有の仕方、他ロールとの関わり方、生み出す価値の量、どれを取っても全く違う様相になっている。
組織が変化していく中で成功したこともあれば、失敗したことも多くあり、自身でも苦い思いを経験している。総じてみれば非常に良い経験で学ぶ機会が多くあった。
スタートアップの成長組織は ”こういう変化をしていくものだ” というなんとなくの経験知を得られたのは、今後どこかで役になっていくのではないかなと思う。少なくとも、成長過程で生まれる問題に動揺することはなくなりそう。
性質の見極めができるようになった
今年一番自身に生まれた変化は "性質の見極め" ができるようになったこと。
ここでの性質とはソフトウェアに付随するもので、可用性, 堅牢性, 可観測性 など。
人によっては常識的なもの、知っていて当たり前の様なものかもしれないが、自分は真にこの性質の重要性、価値を理解できていなかった。以前からも性質に対する言及や考慮、対処などはしてきたつもりではあったが、知ったつもりになっていて、真に理解できていなかった。自分の論理で語ることができなかった。
今ならきちんと語ることができるし(詳しくは社のブログを参照)、設計を考える時には必ず意識することもできる。
これを理解した一番の手応えは、議論を建設的に進められるようになったこと。ソフトウェアに必要な機能性 (機能要件) のほかに求められていることが何であるかを会話の中から性質に翻訳して定義していくことや、自身が考える成功に必要な要素を相手に正確に共有することができるようになった。
これまで仕様定義の難しさに苦しんだり、運用時に明らかになった不便さなどは全てこの性質を見極めきれなかったことによるものだともわかった。
次はこの性質を正しく扱い、アーキテクチャの改善に活かして大きな成果を作っていきたい。
ブログ書いた
書いた。
自身のブログ
https://www.yamarkz.com/blog/work-document-example
https://www.yamarkz.com/blog/overall-202201-202203
https://www.yamarkz.com/blog/refactoring-by-value-object-pattern
https://www.yamarkz.com/blog/the-need-for-architecting
https://www.yamarkz.com/blog/research-into-constructor-and-factory-in-dart
https://www.yamarkz.com/blog/qatar-world-cup-2022-review
社のブログ
https://product.10x.co.jp/entry/payment-for-e-grocery
https://product.10x.co.jp/entry/partner-api-development-guide
https://product.10x.co.jp/entry/introducing-architectural-characteristics
https://product.10x.co.jp/entry/defining-architectural-characteristics
はてなブックマークを取った
去年書いた記事が今年になってSNSでシェアされ、1,000超えのはてなブックマークを取ることができた。(!!!)
文章を書き始めてから「誰かの役に立つ記事を書きたい…!」と思いブログを続けてきたので、1,000超えのブックマークは1つの目標でもあり、はてブに育てられてきた身としてはとても嬉しい出来事だった。
今後も自分が書きたいもので、誰かの役に立つ知見を発信していきたい。
登壇した
今年は2つのイベントで登壇することができた。
最後に外向けに話したのは2019年の秋で、実に3年ぶりの登壇になる。3年も間が開くとスライドの作り方や話の仕方を忘れてしまい、準備に想定の3倍くらいの時間を使ってしまった。これは誤算だった。
FlutterKaigi 2022ではStailerのプロダクト開発の歴史を、KanmuさんとCAMPFIREさんのイベントでは決済機能開発の話を紹介した。
今後も定期的に外向けに話せるような、チャレンジングな仕事をしていきたい。
引っ越した
(お気に入りのランニングコース)
今年のプライベートの変化で一番大きかったのは引っ越し。
長く住んだ新宿を離れた。とても気に入っていた街だったが、色々なことが重なって諸々のことを1度リセットしたいなと思い、思い切って住む街自体を変えてみた。6畳の狭い部屋で仕事と寝食を続けていくことに限界を感じていたのも理由としては大きかった。
今は多摩川沿いに住んでおり、ほぼ毎日川沿いのランニングコースを走っている。高層ビル群を眺めながら街中を走るのも良いが、空が開けた場所を走ることで得られる開放感も最高。
今の街にも慣れて愛着が湧き始めているけど、離れてみてやっぱり新宿は良かったな〜と思っているので、いずれ機会があれば戻りたい。
サッカー見た
(ドイツ戦勝利後の祝杯とポイチ)
今年はワールドカップイヤーというのもあって、サッカーを見まくった。
ずっと日本代表と国内サッカーのファンだったので、ワールドカップが楽しみで仕方なかった。
ワールドカップを楽しむために仕事を頑張ってきたし、引っ越したし、テレビも買ったし、ソファも買った。(散財)
(上田綺世の背番号ユニフォーム)
上田綺世の活躍に期待してユニフォームを着ていたが、残念ながら活躍は振るわず、、、 orz
ドイツとスペインに勝てるとは思ってもいなかった。本当に素晴らしい戦いを見せてくれた。
大会期間中は仕事が終わったら即試合に切り替えられる体験がとにかく良かった。
19時まで猛烈に仕事をして、そのままバーに行き、飲みながらサッカーを楽しむ体験は最高。
4年後が待ち遠しい。
色々なビール飲んだ
(色々な海外ビール、全部IPA)
(Smoke Beer Factory / NAMACHAん Brewing)
今年はビールを飲むことにハマった。自分が好んで飲むのは主に国産のクラフトビール。
土地柄の特徴や醸造までのエピソードに触れながら楽しむ。好みのスタイルはゴールデンエール。
元々日本酒派だったけど、お気に入りのお店を見つけて通い始めたのがきっかけだった。
ビール好きの同僚がいて、美味しいビールのお店に連れて行ってもらったり、オクトーバーフェストにも行った。とても楽しかった
来年も美味しいビールとの出会いを求めて、色々と飲んでいきたい。
2023年にやっていきたいこと
アーキテクチャを進化させる
2023年は2度目のPMFを目指す年になる。成功の鍵を握っているのがアーキテクチャの進化。
0から価値を生み出すこととは違った難しさがあり、プレッシャーも大きいが、これをやりきれたら大きな成功が見えてくるので力を惜しみなく注いでいきたい。
堅牢なコードを書いて、攻めた開発をする
アーキテクチャの進化はもちろん、足元でもバグを生みにくい堅牢なコードが生み出される状態を作っていきたい。
既存コードの品質改善に目下取り組んでいる最中だが、2023年はそれを大きな形にするのと、取り組みから得られる教訓や成果を組織に還元して、組織的にコード品質の向上に取り組める仕組みと文化づくりに向き合っていこうと思う。
未開の地に行く
2023年は未開の地に行く年にしたい。
これはプライベートで新しい地に出向きたいという意味と、学びとして新しいことを知りたいという意味と、仕事で未開の領域を突き進んで開拓したいという3つの意味を含む。
もう若手とも言えない年代に入ったものの、守りに入るのは早すぎるので、中堅としてのフットワークの軽さを活かしてトライするぞ。